イタリア語の発音で、二重子音がありますが、それ以外で、特定の統語的な環境下で子音が二重化することを知りました。具体的にどういうことか、学んでいきましょう。
イタリア語の二重子音
イタリア語の二重子音については、子音によって「伸ばす音」「一拍置く音」「倍増に振動する音」があります。
詳しくは、以下の記事をご参照ください。
イタリア語の特定の子音の二重化
上記のイタリア語の二重子音以外で、特定の統語的な環境下で子音が二重化するようです。
このことをイタリア語で言うと、「il raddoppiamento sintattico」もしくは「il raddoppiamento fonosintattico」と言うようです。
たとえば、
Io vado a Milano.
これを音声学と統語論の両面からみて発音すると
Io vado a Mmilano.
と、子音mが二重になるようです。子音mが二重になる場合は、イタリア語で言うと「伸ばす音」です。
北イタリアでは馴染みがないようですが、中南部イタリアでは、極自然に使われているようです。
では、具体的に一体どーなの? そう思いますよね。
その前に、、、
統語って何?
統語って、言語学を勉強されている方だったら、知っているかもしれませんが、私は聞きなれなかったので、ちょっと調べました。汗。
簡単に言うと、文の構造、文を作る仕組みのことで、文法のようで、文法とはちょっと違うようです。
統語論(とうごろん、英: syntax)とは、ヒト・人間の言語(いわゆる自然言語)において文が構成(combine)される仕組み[1]、または、それ以外の形式言語なども含む言語学の対象である言語一般において文が構成される仕組み、及びそれを扱う言語学の一分野[1]である。
引用元: ウィキペディアopen_in_new
統語について、深く入り込むと、底なし沼に飛び込みそうで、脱線してしまうので、今回はこれまでとします。汗。
では、さっそく本題に戻って、イタリア語の特定の子音の二重化についてお伝えします。
イタリア語の二重化は8つのルールに従うべき
語末の音節にアクセントがある、強く抑揚がついた場合
子音で始まる単語の前に、単語末尾の音節にアクセントがある場合や、強いイントネーションがついた単語の場合は、二重化します。
例えば、
ben fatto → bben fatto
farà bene → farà bbene
perché parli? → perché pparli?
のように発音する必要があるようです。ちなみに、子音bと子音pの二重子音は、「一拍置く音」になります。
強い抑揚がついた主音で単音節語の場合
子音で始まる単語の前にある単語が、主音アクセントのある単音節の場合は、二重化する。
たとえば、
ho preso → ho ppreso
è vero → è vvero
fa buio → fa bbuio
sta zitto → sta zzitto
sto bene → sto bbene
のように発音するようです。
いくつかの単音節がある場合
子音で始まる単語の前に、a, e, o, se, che, chi, tra, fra, da, のように単音節がある場合
たとえば、
a volte → a vvolte
e poi → e ppoi
o bella → o bbella
se pensi → se ppensi
che dici → che ddici
chi parla → chi pparla
tra noi → tra nnoi
fra poco → fra ppoco
da marzo → da mmarzo
のように発音すべきらしいです。
強い抑揚がついた単音節の場合
強いアクセントがついた単音節語 già, giù, là, può, più, が、子音で始まる単語の前にある場合は、二重化します。
例えば、
già fatto → già ffatto
giù sotto → giù ssotto
là sopra → là ssopra
può fare → può ffare
più piano → più ppiano
のように、発音します。
語末から2番目の音節にアクセントがある場合
子音で始まる単語の前に、come, ove, qualche, sopura, contra, infra, のように、語末から2番目の音節にアクセントがある場合
come va? → come vva?
ove sogna → ove ssogna
qualche volta → qualche vvolta
sopra tutto → sopra ttutto
contra noi → contra nnoi
infra mezzo → infra mmezzo
のように発音します。
infra の場合、DOP open_in_new (Dizionario italiano multimediale e multilingue di Ortografia e Pronunzia)で示しているように、二重化しない単語もあるようです。
音調を強化する場合
例えば、
Re maggiore → re mmaggiore
Fa diesis → fa ddiesis
Do di petto → do ddi petto
典礼の名前の場合
例えば、
Spirito Santo → Spirito SSanto
Ave Maria → Ave MMaria
「Gesù Cristo」は、単一の単語とみなされ、アクセントが強化されないが、「Gesù」のみの場合は、例えば、Gesù disse → Gesù ddisse と発音します。
その他
Dio や、dei は、強化するといえるでしょう。
la pietà di DDio
pregavano gli ddei
のようになります。
逆に、二重化しない子音があるようです。
二重化しないイタリア語の子音
子音「sc」で始まる単語は、発音を強化することはできないようです。
また、よくある間違い、特にローマで、二重化しているようですが
ogni tanto → ogni ttanto と発音するのは間違いらしい。
全く強化(二重化)しないパターンは、前置詞の di, in, con, per, 指示代名詞, 代名小詞(me, mi, te, ti)と定冠詞の il, lo, la, です。
ほかに二重化のタイプがあり、それらの統語的なものに当てはまらない、ローマ方言や中南部の典型的な方言です。一つの単語の中にある子音が2倍になり、書式の綴りでは表現されていないものがあります。たとえば、Fabio は Fabbio となり compatibile は compatibbile 、rosa は rossa など、となります。
以下の3つをあげる文法規則を覚えておくと役立ちます。
有声子音「s」は、二重化することはまったくない。だから、読んだり書いたりする場合は、rosa, viso, esame, となる。
-ile, – abile の前にある子音「b」は、まったく二重化しない。したがって、書いたり読んだりするときは、amabile, automobile, となる。
-ione の前にある子音「g」と子音「z」は、絶対二重化しない。だから、書いたり読んだりするときは、ragione, razione, となる。
最後に
この記事の内容は、RAIのアナウンサーを約20年務めていたUghetta Lanariさん著書で、出版社GIUNTI open_in_new から出版されている「Manuale di dizione e pronuncia」という音声CD付の本を参考にしました。
アナウンサー目線では、上記に書かれている内容の発音しなければならないらしいです。したがって、読む単語をただ急いで認識するのではなく、注意深く見る練習が必要とのことです。
今回学んだことは、イタリア語の子音の特定の二重化ルールでしたが、語学は、いろいろ知ると奥が深まりますね。