今回のイタリア語の早口言葉は、似たような単語で、二重子音が続く早口言葉です。二重子音って何?と思うかもしれませんので、まずは、それから説明していきます。
イタリア語の二重子音って?
イタリア語の子音には、二重子音があります。二重子音の関係性は、子音によって異なり、いくつかの子音は、伸ばす音ができたり、他には逆に一拍置いた感じの音や、その後ちょっと口の中に空気を強めに残すして吐き出すような音だったり、さまざまです。
では、少し特徴を押さえていきましょう。
伸ばす二重子音
子音 f, l, m, n, s, v の二重子音は、単純に伸ばす音を表現します。
ただし、子音「s」は、2つの音/s/と/z/があることを覚えておく必要があります。/z/の音の場合は、イタリア語では二重子音は発生しません。
たとえば、「バラ」や「ピンク」という意味の rosa /’rɔːza/と、形容詞で女性名詞を修飾する場合の「赤い」という意味の rossa /’rossa/を比較するとわかりやすいかもしれません。聞き取りの時に、/z/の音の場合は、「s」が二重にならないということです。
/f/の音は、/l/の音と/r/の音が続いた場合は、伸ばす音ではなく、一拍置くような発音になります。たとえば、affluenza /afflu’ɛntsa/, offrire /of’frire/ など、最初の母音の後、一拍間を置く、日本語で言う小さい「っ」が入る感じでしょうか。
補足すると、イタリア語の伸ばす音の二重子音は、日本語で言う「ふー」「るー」「むー」っていう感じとはちょっと違います。例えば、動詞原形belare(メ~と鳴く)直接法現在形1人称単数形の「belo」と、 形容詞(美しい、立派な、良い)などの「bello」を聞くと、前者より後者のほうが、「ll」の部分の音が伸びている。人によっては、日本語で言う小さい「っ」が入っているようにも聞こえる。
一拍置く二重子音
子音 b, c, d, g, p, t, z の二重子音は、音を伸ばさない、ちょっと阻止するような、口の中に空気をためて吐き出すような、二重子音の前で少し一時停止する感じです。
たとえば、「猫」という意味の gatto /’ɡatto/ は、「ga」と「tto」の間に、一拍はさみます。
倍増に振動する二重子音
上記以外に、子音「r」も二重子音があります。イタリア語の特徴的な「r」の発音を、舌先でより多く振動させ倍増する音を作ります。
たとえば、「親愛なる」とか「高い」という意味のcaro /’karo/ と、「ワゴン」や「輸送車」などの意味の carro /’karro/ の違いなど、、上手く発音できるか?
carro /’karro/ の場合は、ちょっと口の中に空気をため込んで吐き出す感じでしょうかね。
ちなみに、イタリア語の二重子音は、単語の出だしに存在しません。いつも、母音が二重子音の前につくか、母音もしくは子音 l, r が続きます。
こちらも併せてご確認ください。
二重子音続きの早口言葉
さて、本題にもどり今回の早口言葉は、
Treno troppo stretto e troppo stracco stracca troppi storpi e stroppia troppo.
和訳でいうと、
電車が狭すぎてとてもへとへとで、身体障害過ぎて不自由過ぎる
って感じでしょうか。
なんか、東京の通勤ラッシュなどを思い浮かべてしまいます。。
簡単に、単語の説明をします。
Treno: 男性名詞、電車や列車の意味
troppo: 副詞、~すぎる、あまりにも(多く)という意味
stretto: 形容詞、狭い、窮屈な、きつい、などの意味
e: 接続詞、そして、~と、などの意味
stracco: 形容詞、(俗語)疲れきった、(物が)消耗した、などの意味(男性名詞を補語)
stracca: 動詞原形 straccare(地域)疲れさせる、直接法現在形3人称単数
troppi: 形容詞 troppo の複数形
storpi: 動詞原形 storpiare(身体や足を)不自由にさせる、(言葉を)間違って発音する、間違って綴る、などの意、直接法現在形2人称単数
stroppia: 動詞原形 stroppiare = storpiare の俗語、直接法現在形3人称単数
この早口言葉は、間違った綴りの俗語が含まれていることがわかり、つまり、最後に間違って発音しすぎちゃうって感じで締めくくっているようで、「落ち」がいいですね。
二重子音以外のポイント
今回の早口言葉の似ているところは、各単語の出だしが、”tr”や”st”や”str”だったりします。これ、意外と言いにくかったりします。
IPA記号で表記すると
/’trɛno/
/’trɔppo/
/’stretto/
/’strakko/
/’strakka/
/’trɔppi/
/’stɔrpi/
/’stroppia/
最後の”storpi e stroppia”は、本当に間違えて発音しちゃいませんか?
最後に
実際にやってみると、本当に “troppi storpi e stroppia troppo” すぎて、間違って発音しすぎています。汗。